SaaS海外展開の完全ガイド|市場選定・ローカライズ・販売戦略まで解説

国内でSaaSを提供する企業のなかには、「海外市場にも顧客を広げたい」「どの国から進出すべきかわからない」と考えている企業もあるのではないでしょうか。
SaaSはインターネットを通じて提供できるため、提供形態によっては物理的な商品を輸送せずに海外ユーザーへサービスを届けることができます。一方、海外進出ではサービスを翻訳するだけではなく、市場調査や法規制への対応、料金設定、販売チャネルの構築などが必要です。
本記事では、SaaSの海外展開を検討している企業に向けて、市場選定からローカライズ、販売・マーケティング戦略まで順番に解説します。海外進出の進め方や失敗を防ぐポイントも紹介するため、進出計画を立てる際の参考にしてください。
■グローハイでは、市場調査やローカライズを軸に、日本企業の海外進出を支援してきました。
市場分析に加え、海外ビジネスマッチングや現地法人設立支援まで一気通貫で対応できる点が強みです。
進出先市場の特性や現地ニーズに合わせた海外展開を検討している方は、以下のサービスページをご覧ください。
SaaSの海外展開とは
SaaSの海外展開とは、自社が提供するSaaSを国外の企業やユーザーにも提供し、海外市場で顧客獲得や事業拡大を目指す取り組みです。
SaaSは「Software as a Service」の略称で、ユーザーがインターネットを通じてソフトウェアを利用するサービス形態を指します。物理的な商品の輸送を必要としないため、提供形態によっては海外ユーザーにもサービスを提供しやすい特徴があります。
ただし、「海外からサービスを利用できること」と「海外市場で事業として成立すること」は別です。
海外で継続的に利用してもらうためには、たとえば次のような対応が必要になります。
- 市場調査:市場規模や競合サービス、顧客ニーズを確認する
- 多言語化:Webサイトやサービス画面を現地の言語に対応させる
- 機能調整:現地ユーザーの業務や文化に合わせてサービスを見直す
- 決済対応:現地通貨や利用されている決済方法に対応する
- 法務対応:個人情報保護をはじめとする法規制を確認する
- 販売体制:営業・マーケティングの方法を設計する
- サポート体制:海外ユーザーからの問い合わせに対応できる環境を整える
特にデータを扱うSaaSでは、進出先の法制度を確認することが重要です。
たとえばEUのGDPR(一般データ保護規則)は、EU域内に拠点を持つ企業だけを対象としているわけではありません。EU域外の企業でも、EU域内の個人に商品・サービスを提供する場合や、その行動をモニタリングする場合などには適用される可能性があります。
出典:欧州委員会「Application of the GDPR」https://commission.europa.eu/law/law-topic/data-protection/information-business-and-organisations/application-gdpr_en
そのため、SaaSの海外展開は「日本語のサービスを外国語に翻訳すること」だけではありません。サービス、販売方法、運営体制まで含めて進出先に合わせて設計することが重要です。
SaaSを海外展開するメリット
SaaSを海外展開するメリットの一つは、国内だけでは接点を持てなかった市場へ顧客基盤を広げられることです。
ただし、海外進出によって必ず売上や利益が増えるわけではありません。市場との相性や必要な投資を確認したうえで、自社にとって進出するメリットがあるかを判断する必要があります。
新たな市場・顧客を獲得できる
海外進出によって、自社のSaaSが国内とは異なる企業やユーザーの課題を解決できる可能性があります。
たとえば、国内では対象となる企業が限られるBtoBやSaaSでも、同じ業務課題を抱える企業が海外に存在すれば、新たな顧客候補になります。
海外市場を検討するときは、国全体の人口や企業数だけを見るのではなく、次のような項目まで確認することが重要です。
- ターゲットとなる企業がどの程度存在するか
- 自社サービスが解決する課題が現地にも存在するか
- デジタルサービスを利用できる環境が整っているか
- 類似サービスがどの程度利用されているか
市場規模が大きいことだけを理由に進出先を決めるのではなく、自社のターゲットとなる顧客が存在するかまで掘り下げて調査しましょう。
売上拡大と収益源の分散につながる
海外で顧客を獲得できれば、国内以外から売上を得られるようになります。
複数の市場から売上を得られる体制を構築することは、特定の国内市場だけに事業を依存するリスクを分散する方法の一つです。
ただし、海外売上が増えても、ローカライズ費用や人件費、広告費、営業費などが大きければ利益につながらない可能性があります。
そのため、売上だけではなく、次のような指標も事業性を判断する材料として活用できます。
- 顧客獲得単価(CAC)
- 顧客生涯価値(LTV)
- 解約率
- 月次経常収益(MRR)
- 営業・サポートコスト
国内事業と同じ基準で判断するのではなく、海外進出によって新たに発生するコストまで含めて確認することが大切です。
グローバルでブランド認知を高められる
海外市場でサービスの導入実績を積むことで、自社やサービスの認知度向上につながる場合があります。
特にBtoBやSaaSでは、海外企業への導入実績や現地企業との提携実績が、新たな商談における信頼材料となる可能性があります。
一方、知名度が低い状態から進出する場合は、サービスを認知してもらうまでに時間がかかることも考えられます。
広告だけに頼るのではなく、SEOやコンテンツマーケティング、SNS、現地パートナーとの連携などを組み合わせながら認知を広げることが重要です。
SaaSの海外展開で直面しやすい課題
SaaSの海外進出では、言語以外にも文化、法規制、決済、営業方法など、国内展開とは異なる課題が生じる可能性があります。
ここでは海外進出時に想定しておきたい代表的な課題を整理します。具体的な対応方法については、第6章以降で詳しく解説します。
言語・文化の違いへの対応
海外進出では、サービスに関わるさまざまな情報を現地ユーザーが理解できる状態にする必要があります。
対象となるのは、Webサイトやサービス画面だけではありません。
- 利用規約
- プライバシーポリシー
- FAQ
- 操作マニュアル
- 営業資料
- 問い合わせ対応
- 契約関連資料
また、文章を直訳するだけで十分とは限りません。
日付や時刻、住所、通貨、数字の表記方法なども地域によって異なります。文化的な背景によって、同じ表現でも受け取られ方が異なる可能性もあります。
こうした違いを考慮せずにサービスを展開すると、ユーザーにとってわかりにくい状態になる可能性があります。
現地のニーズや商習慣の把握
国内ユーザーと海外ユーザーでは、同じ業務分野でも課題や運用方法が異なる場合があります。
たとえば、日本市場で評価されている業務フローが海外では必要とされなかったり、反対に進出先で利用されている外部サービスとの連携機能が求められたりするケースが考えられます。
BtoBやSaaSでは、導入までの意思決定プロセスについても確認が必要です。
無料トライアルからオンラインで契約する方法が適しているのか、営業担当者による商談や導入支援が必要なのかによって、販売体制も変わります。
現地ユーザーへのヒアリングなどを通じて、実際の課題や購買行動を確認することが重要です。
法規制・データ保護への対応
SaaSではユーザー情報や企業データを扱う場合があるため、進出先のデータ保護制度を確認する必要があります。
代表的な制度の一つがEUのGDPRです。EU域外の企業であっても、EU域内の個人への商品・サービス提供や行動のモニタリングなど、一定の条件に該当する場合はGDPRの対象となります。
出典:欧州委員会「Application of the GDPR」
また、日本の個人情報保護法でも、外国にある第三者へ個人データを提供する場合についてルールが定められています。個人情報保護委員会では「外国にある第三者への提供編」のガイドラインを公開しています。
なお、外国にあるサーバーへ個人データを保存することが、一律に「外国にある第三者への提供」に該当するわけではありません。個人情報保護委員会でも、外国サーバーへの保存や外国事業者のクラウド利用について個別の考え方を示しています。
具体的な判断はデータの取り扱い方や契約関係などによって異なります。海外進出の際は最新の公的情報を確認し、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談しましょう。
決済方法・価格設定の最適化
海外進出では、現地ユーザーが利用できる決済方法や価格体系についても検討が必要です。
クレジットカードだけではなく、銀行振込や現地の電子決済サービスなどが利用される場合もあります。
また、日本円の価格をそのまま為替換算するだけでは、現地市場に適した価格にならない可能性があります。
価格設定では、たとえば次の項目を確認します。
- 競合サービスの価格
- 顧客企業の予算
- 現地の物価
- 自社サービスが提供する価値
- 税制
- 為替変動
- 決済手数料
さらに、国によっては国外事業者が提供するデジタルサービスについて税務上の義務が生じる場合があります。
たとえばマレーシアでは、国外事業者が同国の消費者へ提供する一定のデジタルサービスについて、サービス税の制度が設けられています。JETROでも外国籍サービスプロバイダーに対する制度の概要が紹介されています。
税制は改正される可能性があるため、実際に進出する際には現地当局や専門家から最新情報を確認することが重要です。
海外での営業・カスタマーサポート体制の構築
海外ユーザーを獲得したあとも、継続利用を支える体制が必要です。
特に注意したいのが、言語と時差です。
日本の営業時間だけで問い合わせ対応を行う場合、地域によっては回答までに時間がかかる可能性があります。
海外ユーザーへの対応方法としては、たとえば次のような選択肢があります。
- 対応時間の明示:問い合わせへの回答時間を事前に伝える
- FAQの整備:ユーザー自身で問題を解決できる情報を用意する
- メール・チャット対応:問い合わせ窓口を複数用意する
- 外部委託:必要に応じて現地パートナーなどへ業務を委託する
最初から海外拠点を設置するのではなく、顧客数や問い合わせ件数に合わせて段階的に体制を整える方法もあります。
SaaS海外展開の進め方
SaaSの海外展開では、大規模な投資から始めるのではなく、市場を検証しながら段階的に進める方法があります。
基本的には、次の流れで検討します。
- 海外進出の目的と目標を決める
- 進出候補となる国・地域を絞る
- 現地市場と競合を調査する
- テストマーケティングやPoCを行う
- 結果を踏まえて本格展開の体制を整える
海外展開の目的と目標を明確にする
最初に、「なぜ海外へ進出するのか」を明確にします。
目的が曖昧なままでは、進出先や投資額、必要な人員などを判断しにくくなります。
目的としては、たとえば次のようなものが考えられます。
- 新規顧客を獲得する
- 国内市場への依存を減らす
- 特定地域の需要を取り込む
- 海外企業との取引を拡大する
目的を決めたら、「1年間で有料顧客○社」「MRR○円」など、進捗を確認できる指標も設定します。
ターゲットとなる国・地域を選定する
次に、進出候補となる国・地域を複数挙げます。
この段階では1カ国に決め打ちせず、自社サービスとの相性を比較することがポイントです。
たとえば、市場性、顧客ニーズ、競争環境、法規制、言語、販売難易度などの条件から候補を絞ります。
具体的な評価基準については、第5章で詳しく解説します。
現地市場・競合を調査する
進出候補を絞ったら、現地市場と競合を調査します。
統計上の市場規模だけではなく、「現地企業が現在どのように課題を解決しているのか」まで確認することが重要です。
競合については、次のような項目を調べます。
- 機能
- 料金
- ターゲット
- 導入企業
- Webサイトへの集客方法
- 無料トライアルの有無
- 営業方法
- サポート内容
直接的な競合SaaSだけでなく、Excelやメール、既存の業務システムなど、顧客が現在利用している代替手段も確認しましょう。
PoC・テストマーケティングを実施する
市場調査を行ったあとは、小規模なテストマーケティングやPoCを通じて仮説を検証します。
テストマーケティングとPoCでは、主な目的が異なります。
テストマーケティングでは、市場からどの程度反応を得られるかを確認します。
たとえば、次のような方法があります。
- LPを作成して問い合わせを集める
- Web広告を少額から配信する
- 無料トライアルを提供する
- 現地企業へヒアリングを行う
一方、PoC(Proof of Concept)は、サービスや仕組みが実際の環境で成立するかを小規模に検証する取り組みです。
たとえば、現地企業へ一定期間試験導入してもらい、必要な機能や運用上の課題を確認する方法が考えられます。
いずれの場合も、「問い合わせがあった」「広告がクリックされた」という結果だけで判断しないことが重要です。
問い合わせ、商談、契約、継続利用など、その後の行動まで確認し、事業として成立する可能性を検証します。
本格展開に向けた体制を構築する
テストを通じて一定の需要が確認できたら、本格展開に向けた体制を整えます。
主に検討するのは次の領域です。
- プロダクト開発
- マーケティング
- 営業
- カスタマーサクセス
- 法務
- 経理・税務
海外事業専任のチームを設けるのか、国内チームと業務を共通化するのかについても検討します。
初期段階ですべてを自社内にそろえる必要はありません。業務内容や予算に応じて、現地パートナーや専門会社を活用することも選択肢になります。
SaaS海外展開における市場選定のポイント
SaaSの海外進出では、「どの市場を選ぶか」が重要な判断の一つです。
市場規模だけを理由に進出するのではなく、自社サービスが競争力を発揮できる市場かを複数の観点から判断しましょう。
市場規模・成長性を確認する
最初に確認したいのが、市場規模と成長性です。
ただし、「その国のSaaS市場が大きい」という情報だけでは十分ではありません。
自社サービスが営業管理SaaSであれば営業支援分野、人事SaaSであればHRテック分野など、実際に参入するカテゴリーまで絞って調査します。
市場規模に関するデータを見る際は、次の項目も確認しましょう。
- 調査対象
- 調査年度
- SaaSの定義
- BtoB・BtoCの区分
- 調査会社や公的機関などの出典
古い市場データだけで判断せず、可能な限り最新の公的統計や調査資料と照らし合わせることも大切です。
自社サービスと現地ニーズの相性を分析する
市場が大きくても、自社サービスが現地ユーザーの課題に適合しなければ契約にはつながりにくくなります。
そこで重要なのが、現地市場でプロダクト・マーケット・フィットを実現できる可能性を検証することです。
具体的には、次のような問いを整理します。
- 誰がサービスを利用するのか
- どのような課題を解決するのか
- 現在はどのような方法で課題を解決しているのか
- 競合ではなく自社サービスを選ぶ理由があるか
- 現地向けに変更が必要な機能はあるか
国内と同じターゲット設定をそのまま使うのではなく、現地ユーザーへのヒアリングなどを通じて検証しましょう。
競合サービスの状況を調査する
競合状況からは、市場の需要と参入難易度を考えるための情報を得られます。
競合が多い市場には一定の需要が存在する可能性がある一方、顧客獲得競争が激しいことも考えられます。
反対に、競合が少ないからといって参入機会が大きいとは限りません。そもそも市場が十分に形成されていない可能性もあります。
競合調査では、次の項目を確認します。
- 価格
- 機能
- 顧客層
- 導入実績
- ユーザーレビュー
- 営業方法
- 広告・SEO
- パートナー制度
競合との差を整理し、「自社を選ぶ理由」を説明できるか確認しておきましょう。
法規制や参入障壁を確認する
市場選定では、法規制や参入障壁も重要な判断材料です。
データ保護、税務、契約、消費者保護など、自社サービスに関連する制度を確認します。
たとえばEU市場へサービスを提供する場合、サービスの提供方法や個人データの取り扱い状況によってはGDPRへの対応が必要です。GDPRでは、個人データの処理についてデータ最小化などの原則も定められています。
市場によって関連する制度は異なるため、進出候補ごとに確認しましょう。
市場選定で活用したい調査方法
市場選定では、公開されているデータを使った定量調査と、ユーザーへのヒアリングなどの定性調査を組み合わせることが重要です。
まず、候補となる市場を同じ基準で比較すると判断しやすくなります。
| 評価項目 | 確認する内容 |
| 市場性 | ターゲット企業数、市場規模、成長性 |
| 顧客ニーズ | 解決したい課題や現在の解決方法 |
| 競争環境 | 競合数、価格帯、主要サービス |
| 法規制 | データ保護、税務、契約上の条件 |
| 販売難易度 | 営業方法、商習慣、販売チャネル |
| ローカライズ | 言語、機能、決済などの対応範囲 |
具体的な調査方法には次のようなものがあります。
| 調査方法 | 確認できること |
| 公的統計 | 市場規模、企業数、経済状況 |
| 業界レポート | 市場動向、競争環境 |
| 競合分析 | 機能、価格、販売方法 |
| 検索キーワード調査 | 検索ニーズや情報収集行動 |
| ユーザーインタビュー | 課題、ニーズ、購買行動 |
| テスト広告 | ターゲットや訴求への反応 |
| PoC | 実際の利用環境における実現可能性や課題 |
海外市場については、JETROでも国・地域別のビジネス情報や海外進出に関する情報が提供されています。公的情報と現地ユーザーから得た情報を組み合わせ、複数の視点から判断しましょう。
SaaSの海外展開で重要なローカライズ
SaaSの海外進出におけるローカライズとは、サービスを現地の言語、文化、業務、利用環境に合わせて調整することです。
第3章で紹介した言語や文化の違いに対応し、現地ユーザーがサービスを利用しやすい状態を整えます。
SaaSにおけるローカライズとは
ローカライズは、単なる翻訳ではありません。
主な対象としては次のようなものがあります。
- 言語
- UI・UX
- 通貨
- 日付・時刻
- 決済
- 機能
- 法務文書
- カスタマーサポート
必要な対応範囲は、サービスや進出先によって異なります。
最初からすべてに対応するのではなく、契約や継続利用への影響が大きい項目から優先順位を付けるとよいでしょう。
Webサイト・サービス画面を多言語化する
多言語化では、Webサイトだけでなく、ユーザーが利用する一連の画面を確認します。
たとえばトップページが英語になっていても、登録画面や決済画面が日本語のままでは、ユーザーが登録や契約を途中で断念する可能性があります。
特に、次の項目は見落とさないよう注意しましょう。
- CTA
- 入力フォーム
- エラーメッセージ
- メール通知
- 決済画面
- ヘルプページ
翻訳後は、可能であればネイティブスピーカーなどに実際の画面を確認してもらい、不自然な表現や操作上の問題がないかチェックします。
現地の文化・商習慣に合わせる
ローカライズでは、言葉だけでなく、サービスの利用方法や販売方法も現地に合わせて調整します。
たとえば契約方法、営業プロセス、導入支援などに対するニーズは、市場によって異なる可能性があります。
ユーザーインタビューなどを通じて、次の点を確認しましょう。
- 購入前にどのような情報を確認するのか
- 誰がサービス導入を決定するのか
- 契約までにどのようなプロセスがあるのか
- 導入時にどのような支援を求めるのか
得られた情報をサービス設計や営業方法に反映することが重要です。
料金・決済方法を現地向けに最適化する
料金もローカライズの対象です。
単純に日本円の価格をドルやユーロへ換算するのではなく、現地の競合価格や顧客の予算、提供する価値などを確認します。
料金体系についても、次のような選択肢があります。
- 月額・年額
- 無料トライアル
- フリーミアム
- ユーザー数課金
- 従量課金
決済方法や税制も含め、自社サービスと進出先に適した仕組みを検討しましょう。
カスタマーサポートを現地化する
SaaSでは契約後も継続して利用してもらうため、カスタマーサポートもローカライズの対象になります。
初期段階では問い合わせ件数に合わせて、
- 多言語FAQ
- メール
- チャット
- オンラインミーティング
などを組み合わせる方法があります。
また、問い合わせ内容を記録すると、現地ユーザーがどこでつまずいているのかを把握できます。蓄積した情報は、FAQだけでなくサービスそのものの改善にも活用できます。
SaaS海外展開における販売・マーケティング戦略
海外市場でサービスを提供できる状態になっても、ターゲットに認知されなければ顧客獲得にはつながりません。
現地ユーザーがどのように情報を集め、サービスを比較し、契約するのかを確認したうえで販売・マーケティング戦略を設計します。
海外向けWebマーケティングを実施する
SaaSでは、Webサイトが重要な顧客接点の一つです。
まずは、次の情報をわかりやすく伝えられる状態にします。
- 誰向けのサービスか
- どのような課題を解決できるか
- どのような機能があるか
- 料金はいくらか
- どのように利用を開始できるか
日本語サイトをそのまま翻訳するのではなく、現地のターゲットが知りたい情報や比較基準を踏まえてページを設計することが重要です。
SEO・コンテンツマーケティングを活用する
検索を通じて情報収集する顧客に対しては、SEOやコンテンツマーケティングを活用できます。
まず、現地ユーザーがどのような言葉で課題やサービスを検索しているのかを調査します。
そのうえで、
- 課題解決記事
- サービス比較記事
- 導入ガイド
- 導入事例
- 用語解説
など、検索意図に合ったコンテンツを作成します。
日本語のキーワードをそのまま翻訳するのではなく、現地ユーザーが実際に利用する表現を調べることがポイントです。
SNS・Web広告で認知を拡大する
短期間で市場の反応を確認したい場合には、SNSやWeb広告も選択肢になります。
特にテストマーケティングでは、
- どのターゲットが反応するのか
- どの訴求がクリックされるのか
- 問い合わせにつながるのか
- 商談や契約につながるのか
などを段階的に確認できます。
広告のクリック数だけで成果を判断せず、その後の商談や契約まで追跡することが重要です。
現地パートナー・代理店を活用する
自社だけで海外営業を行うのが難しい場合は、現地パートナーや代理店を活用する方法があります。
現地企業が持つ顧客ネットワークや営業ノウハウを活用できれば、新たな販売チャネルを構築できる可能性があります。
一方、提携する際には次の事項を事前に明確にしておきましょう。
- 販売範囲
- 手数料
- 顧客情報の管理
- サポートの担当範囲
- 契約終了時の対応
パートナーの候補を比較する際は、自社の業界やターゲット企業に関する知見も確認することが重要です。
インサイドセールス・現地営業体制を構築する
BtoB SaaSでは、インサイドセールスによる商談獲得も選択肢になります。
オンライン商談を活用すれば、日本から海外企業へ営業できる場合もあります。
ただし、商談数だけを見るのではなく、
認知 → 問い合わせ → 商談 → 契約 → 継続利用
というプロセス全体を確認します。
商談数や顧客数が増え、現地での営業活動を強化する必要が出てきた段階で、現地営業担当者の採用や拠点設置を検討する方法もあります。
SaaS海外展開を成功させるためのポイント
海外進出では、最初から完成形を目指すのではなく、市場から得た情報をもとにサービスや販売方法を改善していくことが重要です。
最初から複数国へ展開しすぎない
複数国へ同時に進出すると、言語、法規制、営業、サポートなど、対応しなければならない範囲が広がります。
その結果、それぞれの市場へ十分なリソースを投入できなくなる可能性があります。
まずは優先市場を絞り、
- この市場で契約が成立するのか
- 継続利用してもらえるのか
- 継続的に顧客を獲得できるのか
といった点を確認してから、次の市場への展開を検討するとよいでしょう。
現地ユーザーの声を継続的に収集する
市場調査は進出前だけで終わらせず、サービス提供後も継続します。
ユーザーへのヒアリングでは、たとえば次の項目を確認します。
- 契約した理由
- 契約しなかった理由
- 使いにくい機能
- 欲しい機能
- 解約した理由
営業、サポート、プロダクト開発などの担当者が情報を共有できる仕組みを作り、サービス改善につなげましょう。
データをもとに改善を繰り返す
海外事業では、感覚だけで判断せず、各段階の数値を確認しながら改善します。
たとえば次の指標があります。
- Webサイト訪問数
- 問い合わせ率
- 無料トライアル登録率
- 商談化率
- 契約率
- CAC
- LTV
- 解約率
たとえばアクセス数は多いにもかかわらず契約率が低い場合、集客量ではなく、ターゲット設定や料金、サービス内容などに課題がある可能性があります。
各プロセスの数値を分けて確認することで、改善すべき箇所を特定しやすくなります。
信頼できる現地パートナーを確保する
現地市場への知識が不足している場合には、外部の専門家やパートナーを活用する方法があります。
たとえば、
- 市場調査会社
- マーケティング会社
- 販売代理店
- 弁護士・会計士
- 翻訳・ローカライズ会社
などが候補になります。
「海外に詳しい」という理由だけで選ぶのではなく、自社の業界や対象国に関する実績・専門性、対応できる業務範囲などを確認しましょう。
中長期的な視点で海外展開を進める
海外市場では、認知獲得や販売チャネルの構築に時間がかかる場合があります。
そのため、短期間の売上だけで撤退や追加投資を判断するのではなく、事前に評価期間と判断基準を設定しておくことが重要です。
たとえば、
- 6か月で一定数のPoCを実施する
- 1年間で一定数の有料顧客獲得を目指す
- 一定期間後の契約継続率を確認する
など、自社の事業計画に合わせて段階的な目標を設定します。
SaaS海外展開でよくある失敗と対策
海外進出の失敗を防ぐには、起こり得る問題をあらかじめ想定しておくことが重要です。
ここでは代表的な失敗パターンと対策を整理します。
国内で成功したサービスをそのまま展開する
国内で支持された機能や販売方法が、海外でも同じように評価されるとは限りません。
対策:現地ユーザーへのヒアリングと市場検証を行う
本格的な開発や営業活動を始める前に、現地企業へ課題や利用意向を確認しましょう。必要に応じてPoCを実施し、実際の利用環境でも検証します。
市場調査が不十分なまま参入する
市場規模だけを見て進出すると、自社のターゲットとなる顧客が十分に存在しない可能性があります。
対策:市場規模・顧客・競合を分けて調査する
マクロな市場規模だけでなく、自社が実際にターゲットとする企業や、その企業が抱える課題まで絞り込んで検証します。
ローカライズを翻訳だけで済ませる
文章だけを翻訳しても、料金体系やUI、業務フローが現地に合っていなければ、利用しにくいサービスになる可能性があります。
対策:サービス全体を現地ユーザーの視点で確認する
認知から登録、契約、利用、問い合わせまで、一連の顧客体験を確認しましょう。
販売チャネルを確立できていない
サービスを海外から利用できる状態にするだけでは、顧客に認知されるとは限りません。
対策:ターゲットに合わせて販売チャネルを設計する
SEO、Web広告、SNS、アウトバウンド営業、代理店などから、自社のターゲットに合った方法を検証します。
海外展開を担う人材・リソースが不足する
海外進出では、翻訳だけでなく、マーケティング、営業、法務、サポートなど複数の業務が発生します。
担当者が国内業務と兼任している場合、海外事業に十分な時間を確保できなくなる可能性があります。
対策:必要な業務と担当者を事前に整理する
社内で対応する業務と外部へ委託する業務を分け、必要な予算や人員を計画しましょう。
SaaSの海外展開は事前の市場調査とローカライズが重要
SaaSはインターネットを通じて提供できるため、提供形態によっては海外ユーザーにもサービスを届けられます。
しかし、海外から利用できる状態にするだけで、海外事業が成立するわけではありません。
SaaSの海外展開では、次の取り組みが重要です。
- 進出候補となる市場を比較する
- 現地ユーザーのニーズを調査する
- 言語や料金、UIなどをローカライズする
- 法規制やデータ保護制度を確認する
- 現地に適した販売チャネルを構築する
- テストマーケティングで市場の反応を確認する
- 必要に応じてPoCで実際の利用環境を検証する
- データとユーザーの声をもとに改善する
特に、市場調査が不十分な段階で大規模な開発や現地拠点への投資を先行させると、市場とのミスマッチが判明した際の負担が大きくなる可能性があります。
まずは候補市場を比較し、ユーザーインタビューやテストマーケティングなどを通じて需要を確認しましょう。その後、必要に応じてPoCを行い、ローカライズや販売戦略を調整しながら本格展開へ進むことが重要です。
海外市場の情報収集や現地調査を自社だけで行うことが難しい場合には、JETROなどの公的機関や、対象国・業界に知見を持つ専門家を活用する方法もあります。
自社のサービスに適した市場はどこか、どの程度のローカライズが必要かを整理したうえで、段階的に海外進出を進めていきましょう。
グローハイのサービス詳細についてはこちら:https://glohai.com/
お問い合わせはこちら:https://glohai.com/contact
■グローハイでは、市場調査やローカライズを軸に、日本企業の海外進出を支援してきました。
市場分析に加え、海外ビジネスマッチングや現地法人設立支援まで一気通貫で対応できる点が強みです。
進出先市場の特性や現地ニーズに合わせた海外展開を検討している方は、以下のサービスページをご覧ください。
