中小企業の海外展開、支援はどう選ぶ?公的支援と民間の使い分け

中小企業が海外展開を考え始めたとき、国や自治体の公的支援と、民間の支援会社のどちらに頼めばよいのか、迷う方は多いと思います。結論から言うと、頼み先は「いまの検討段階」で変わります。市場を調べる段階と、現地で営業や会社設立を進める段階では、必要な支援の種類が違うからです。
この記事では、公的支援と民間の支援がそれぞれ何を担うかを、公式ページの記載にもとづいて整理します。そのうえで、検討の段階ごとの頼み先と、支援会社を選ぶときの確認点をまとめます。
中小企業の海外展開、まず何から決めるか
最初に決めるのは、支援の種類ではなく「自社が今どの段階にいるか」です。大きく4つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 段階1:進出するかどうかを決める前。 進出が自社に合うのか、何が必要なのかを知りたい段階です。
- 段階2:市場を調べる。 進出先の市場規模や競合、現地の顧客の反応を確かめる段階です。
- 段階3:販路を作る。 現地の代理店や取引先を探し、商談を進める段階です。
- 段階4:現地で会社を作る。 現地法人の設立や、ビザ・税務・採用などの手続きを進める段階です。
段階が決まれば、頼み先の候補は絞れます。次の節から、公的支援と民間の支援が、それぞれ何を担うのかを見ていきます。
公的支援でできること
公的支援は、情報提供・相談・商談の場づくりが中心です。公式ページに書かれている範囲で、代表的なものを挙げます。
ジェトロ(日本貿易振興機構)は、中堅・中小企業の海外展開支援として、次のような内容を掲げています。
- 貿易投資相談や、セミナー・講演会などの情報提供
- 「新輸出大国コンソーシアム」による、専門家の個別支援(海外展開戦略の策定から事業計画、実行まで)
- ジャパン・パビリオンへの出展支援や、海外バイヤーとの商談会
- 越境ECなどを活用した販路開拓
- 輸出商談の初心者向けの人材育成塾
中小企業基盤整備機構(中小機構)の海外ビジネスナビでは、専門家が中小企業・小規模事業者の相談に無料で応じるとしています。ほかに、海外展開アドバイス支援(ハンズオン支援)や、基礎講座、海外展示会のハンドブックなどの情報があります。無料と書かれているのは相談で、そのほかのメニューの費用は、公式ページに記載がありません。利用前に確認してください。
自治体や産業振興の公社にも、販路・海外展開の相談窓口があります。たとえば東京都の中小企業振興公社には、Tokyo SMEサポートセンターとして、販路・海外展開を扱う窓口があります。
公的支援の強みは、相談が無料のものがあること、情報の出どころが公的で確かめやすいこと、展示会や商談会といった「機会」が用意されていることです。一方で、上で挙げた公式ページには、現地での営業活動を代行したり、現地法人の設立手続きを一括で請け負ったりする内容は書かれていません。そこは、民間の支援が担う領域になります。
民間の支援会社でできること、公的支援との違い
民間の支援会社には、調査や助言にとどまらず、現地での実行まで担う会社があります。実行の中身は、営業・代理店との商談・手続きなどです。民間の支援は基本的に有料なので、何にいくら掛かるかは会社ごとに違います。相談の段階で見積りを取り、比べるのが基本です。
一例として、グローハイ(アメリカを中心に日本企業の海外展開を支援しています)の内容を挙げます。
- 市場調査: 公開統計や業界レポートから市場を把握する二次調査と、現地の消費者や業界関係者に直接聞く一次調査を使い分けます。調査期間は最短で約2ヶ月からと案内しています。詳しくは海外市場調査・リサーチ・コンサルティングをご覧ください。
- 販路開拓: 代理店候補の選定から、アプローチ、商談への同席、条件交渉までを、アメリカの現地スタッフが進めます。代理店のリストの提供だけを求める場合は、他社のほうが適しているとも案内しています。詳しくは海外営業代行・販路開拓をご覧ください。
- 現地法人の設立: 会社設立や登記の代行に加えて、税務・会計、現地採用までワンストップで支援します。会社設立の対応はアメリカのみです。詳しくはアメリカの会社設立・現地法人設立をご覧ください。
公的支援と民間の支援は、どちらかを選ぶものではなく、組み合わせて使うこともできます。相談が無料の窓口で情報を集め、実行の段階で民間に頼む、という使い方もできます。
検討の段階別・頼み先の選び方
段階ごとの、頼み先の考え方を表にまとめます。
| 段階 | 公的支援で確かめられること | 民間の支援に頼むこと | 頼む前に聞くこと |
|---|---|---|---|
| 1. 決める前 | ジェトロの貿易投資相談、中小機構の無料相談、セミナー | 進出するかどうかを整理する初期相談 | 初期検討でも相談できるか。相談の時間と進め方 |
| 2. 市場を調べる | 公的機関のセミナーや情報提供 | 現地でのインタビューなど、公開情報では分からない調査 | 調査の手法、期間、見積りの出し方 |
| 3. 販路を作る | 展示会・商談会、越境ECなどの機会 | 代理店の選定から商談・条件交渉まで | 誰が現地で動くか。リストだけで終わらないか |
| 4. 現地で会社を作る | 相談窓口での情報収集 | 設立・登記、ビザ、税務・会計、採用の手続き | 対応している国。設立後の手続きまで見てもらえるか |
段階2では、現地の声を直接集める調査が有効な場合があります。市場調査の進め方は、海外市場調査・リサーチ・コンサルティングで説明しています。段階3は、海外営業代行・販路開拓、段階4は現地法人設立が対応します。
サービス全体の流れを知りたい方は、サービス一覧から、自社の段階に近いものを探してみてください。
支援会社を選ぶときの確認点(5つ)
民間の支援会社に頼むときは、次の5点を確かめると、選びやすくなります。
- 調査や提案で終わらず、実行まで担うか。 報告書を受け取って終わりか、その先の営業や手続きまで見てもらえるかを確かめます。
- 現地に人がいるか。 現地の相手とのやり取りを、誰が、どの言語で進めるのかを確かめます。
- 自社と同じ規模・業種の事例があるか。 事例が公開されているか、中小企業の例があるかを見ます。
- 日本側の窓口が、日本語で相談できるか。 連絡のしやすさは、進め方に影響します。
- 初期検討の段階でも相談でき、期間と費用の見積りが先に示されるか。 たとえばグローハイでは、30分の無料相談があり、初期検討段階でも調査のみの相談でも対応できると案内しています。初期調査から商談の創出までは、数ヶ月単位が一般的とも案内しています。
実際に支援した中小企業の例
グローハイが支援した中小企業の例を3つ紹介します。いずれも公開している事例の内容にもとづいており、具体的な数値は公開していません。
- 中小のアパレルメーカー(市場調査とデジタルマーケティング): アメリカ市場で製造する衣服の流通を活発にし、新規顧客と売上を増やしたい企業です。現地の消費者ニーズやトレンドを調べ、その結果をもとに広告運営を支援しました。アメリカ市場での新規顧客と売上高が増えています。
- 中小の飲食業(現地法人の設立): 食品販売の事業を世界市場に広げるため、国外での会社設立を計画していた企業です。書類の作成と手続きを一貫して支援し、ビザ取得の助言も行いました。すべての手続きを滞りなく完了し、会社設立と事業展開を実現しています。
- 中小の分析計測機器メーカー(販売代理店の開拓): アメリカ市場での販路拡大のため、新しい販売代理店を探していた企業です。候補をリストアップし、そこから最適なパートナーを選定して、販路拡大につなげました。
ほかの事例は、海外進出事例で紹介しています。
よくある疑問
Q. 中小企業は、どのくらい海外展開をしているのですか。
中小機構の中小企業の海外展開に関する調査(2024年)によると、海外展開を行っている企業は13.3%でした。予定がある企業(2.1%)と、関心がある企業(15.6%)を加えると、約3割になります。一方、行っておらず関心もない企業が69.0%でした。この調査は、2024年2月に、全国の中小企業者等1,000社を対象にしたWebアンケートです。調査によって、対象や「海外展開」の範囲が違うので、割合は調査ごとに確認してください。
同じ調査では、海外展開に取り組む企業の課題として、「海外事業に対応できる人材がいない」(32.9%)、「為替変動のリスクがある」(32.9%)、「信頼できる現地パートナーの開拓ができない」(31.9%)が上位でした。また、海外展開を実現できた要因では、「信頼できる現地パートナーの開拓」(54.9%)が最も高くなっています。パートナー探しが、成功の要因でもあり、課題でもあるということです。
Q. なぜ日本企業は海外進出するのですか。
理由は会社ごとに違うので、この記事では、決めたあとに「誰に何を頼むか」に絞って説明しました。メリットとデメリットは、海外進出のメリット・デメリットで解説しています。費用の目安は海外進出にかかる費用、失敗の原因は海外進出でよくある失敗をご覧ください。
まとめ
中小企業の海外展開では、頼み先は検討の段階で変わります。決める前や調べる段階は、無料の相談窓口や公的な情報が役に立ちます。販路を作る段階や、現地で会社を作る段階では、実行まで担う民間の支援が力になります。支援会社を選ぶときは、実行まで担うか、現地に人がいるか、同じ規模・業種の事例があるか、日本語で相談できるか、見積りが先に示されるか、の5点を確かめてください。
自社の段階が分からない場合や、どこから手を付けるか迷う場合は、まず相談してみてください。グローハイでは、30分の無料相談から始められます。
- 支援の全体像は、サービス一覧で確認できます。
- 海外での新規事業の立ち上げは、海外進出支援コンサルをご覧ください。
- 相談は、お問い合わせ・無料相談から受け付けています。
- 支援した企業の例は、海外進出事例で紹介しています。